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明日からです
「明日はいよいよインハイ予選です」
女子バレーボール部 主将の佳那は部員たちの前で、明日の大会についての再確認すべき内容を話している。
「今年こそは県代表になって、インターハイに行くよ!」
最後にそう締め括ると、解散になり、各々身支度を始める。
6月になり、梅雨入りまであと少し。じめじめした暑さが続く。
「由菜、一緒に帰ろー」
「あー、うん、もう少しサーブ練習してから」
「やりすぎだから!帰るよ!」
佳那は由菜のボールを取り上げて、さっさと倉庫に片付けると、由菜のスポーツバッグを持つ。テキパキと動く佳那をぼんやり見ながら、由菜はバッグを受けとる。
「はい、帰るよー」
後輩たちに声をかけながら、2人は体育館を後にする。
「明日はもう予選かぁ。早いね」
「そうだね」
「こう、燃えてくるねぇ!」
「いつも、燃えてるじゃん」
たわいもないことを話しながら、2人は学校の最寄り駅に向かって歩く。どの部活も予選に向けての練習を終えて、帰っている。コンビニで買い食いをしている生徒もいるなかで、2人はまっすぐ駅に向かう。
「佳那はさ、進路決めてるの?」
唐突に由菜は佳那に訊いてきた。今まで進路の話なんてしたことがない。いつもバレーボールの話ばかりしてきた。
「どーしたの、唐突に」
「いや、ふと、なんとなく」
「ふーん? 私は大学行くよ。大学行って、教員免許取って、子どもたちにバレー教えるんだ」
にこにこ笑いながら、佳那は楽しそうに話す。
「高校がいいかなーって思ってて、あと英語の先生かなって」
「英語苦手じゃ......」
「他の科目よりはね。でも、短期で良いから留学して、その経験と部活のこと伝えられたらなぁって。世界は広いって」
「まだ世界知らないのに?」
「そうだけど、由菜見てたら伝えたくなったの!」
「どうして?」
「由菜と全日本を見に行ったときに強いって自由だなーって。強ければ視野がもっと広げられるし」
「それだったら、もっと強くなれば」
「私には無理だってわかってるから、それは由菜に任せるよ」
由菜は高校卒業後は地元の実業団入りが決まってる。そこに入団すれば、プロとして戦い、世界も夢ではない。
「わたしも強くないかもよ?」
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