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かとう
「強いよ、十分。あれだけ練習を普通にやって、いろいろバレーのこと考えられて、体のことも食事も考えられて。十分強いよ」
「そう、かな」
バレーのことになれば饒舌になる由菜だったが、今はそうではない。その様子に佳那は不安を覚える。
「それを明日から証明しよ。勝てば皆がわかるから」
「うん。勝とう」
拳を軽く合わせてから、2人は改札口で別れた。
翌日、初戦前に公式ウォームアップが始まった。
いつも通りのウォームアップ。スパイクも、サーブもいつも通り。
しかし、由菜のトスだけがいつも通りではなかった。
打てないことはない。いつもより精度が少し落ちていた。そのことにいち早く気づいたのは佳那だった。
「何かあった?」
「いや、ないんだけど、わからない」
「すぐに立て直せそう?」
「わかんない」
佳那が腕組をして悩んでいると、監督が聞きに来た。
「どうした?」
「由菜の調子が」
「なんでもありません、大丈夫です」
佳那の話を遮るように由菜は言うと、ベンチに戻っていった。監督と佳那は顔を見合わせる。
「どうする?」
「スタートはオーダー通りでいきましょう。どうしてもダメそうならば、交代を」
「そうするか」
困ったように頭を掻きながら、監督はベンチに戻る。
試合が始まるまで各々ストレッチをしたり、水分補給をするなどして過ごした。
そして試合開始のアナウンスが流れた。
「よし、円陣!」
佳那の掛け声で登録メンバーは円陣を組む。
「今からがスタート、勝つよ!」
「おー!」
ハイタッチを交わしながら、スターティングメンバーはポジションにつく。
初戦の相手は、練習試合でよく戦う学校。戦績は勝ち越しているが、戦術を知られているため油断はならない。
気を引き締めるために、佳那は頬を叩く。
「ナイッサー!」
サーブをする同期の桃子に佳那は声をかける。少し固そうな顔をしていた桃子は深呼吸をしてから、ボールを空中に放った。
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