4人が本棚に入れています
本棚に追加
/8ページ
繋げる
最終セットは一進一退の攻防が繰り広げられた。佳那が発破をかけたおかげか、チームメイトたちはどんな球でも追いかけて繋げた。
繋げて、繋げて、由菜に最高のAパスでボールを託す。
「由菜!」
リベロの祐希がキレイなレシーブをして、由菜に球を運ぶ。
「ライト!」
佳那は大きく手を挙げてから、助走を始める。
(相手ブロックは2枚!)
相手も疲れてきているのか、スピードのある攻防についてきていないのか、ブロックは2枚だけだった。
球はいつもより半個分だけ、イメージよりずれた。
(それが、なに!?)
佳那は体全体をしならせて、スパイク体勢に入る。
この球を失敗はしない。
その気持ちだけが、体を軽くしてくれる。インナーに撃ち抜き、誰もいないところへ球を叩きつけた。
あと5点。
相手との点差は2にした。
でも、まだ油断ならない。
チームメイトとハイタッチを交わしながら、佳那は仲間に気持ちを切らさないように発破をかける。
由菜はいつもと変わらず、ハイタッチをすると、相手コートを淡々と観察していた。
「由菜?」
「すごいね、佳那」
いつも試合中に誉めることはない。佳那は由菜の顔を見ると、いつもの、いつも以上の試合モードに没入したことを確信した。
「ごめん、遅れた。スロットルが入った」
凄まじい集中のなか、由菜はチームメイトにそう言った。
その言葉に、その雰囲気に、気持ちが高揚してきたのを、佳那ははっきりと感じた。
「最後まで畳み掛けるよ!」
佳那はもう一度チームメイトたちに発破をかける。誰もが声を出して、呼応する。
「いこう」
最初のコメントを投稿しよう!