終わった

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終わった

 この試合の決着が着いた。 「お、終わった......」  息を切らしながら、佳那は得点ボードを見た。初戦の長い戦いが今終わったことに、少しの安堵を覚える。  無事に初戦を突破することができた。佳那はこれから長い予選の道を少し進めることができ、嬉しくなってくる。 「由菜!」 「佳那!」  2人は人目も憚らず、抱き合う。 「何あれ、サイコーなんですけど!」 「わかる!? スパーンと来たんですけど!」 「決めてって球送られて、あれはドンピシャ過ぎて感度しましたけど!」 「だって、佳那に最後は託したかったから」  極上の笑顔と共に佳那は由菜にそう言われると、驚いてはしゃいでいるのを忘れた。 「佳那が言ってくれたじゃん。わたしは強いって、でも強くないよ」  由菜は笑顔で言っているのに、どこか仮面のように見えるその顔に佳那は違和感を覚える。 「強くないよ、佳那がいないと。佳那ともっとバレーがしたい。したいよ」  泣きそうな顔。由菜は勝ったからか、少し気が緩み、泣く寸前の顔をしていた。  そこでようやく佳那は気がついた。  今日から始まる高校最後の試合。佳那たち3年生はインターハイが終われば引退する。引退すれば、各々の進路に向かって歩き出さなければならない。  佳那は進学、由菜は実業団入り。  2人の道はインターハイが終われば、自然に別れてしまう。  その当然のことに、由菜はプレッシャーに感じていた。  今日で負ければ、今日まで。  明日で負ければ、明日まで。  終わりは無情にもすぐそこにある。  出来ることなら少しでも長く、試合を勝ち進みたい。  その思いは、調子を狂わせ、力ませる。結果、あの不調。しかも自覚させたのは自分の言葉だと知り、佳那は同様する。 「しよう、明日も明後日も」
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