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「すいません、この缶なんですけど昨日出しそびれてしまったので、ここで処分してもらう事ってできますか?」
そう言って僕は45リットルのゴミ袋にパンパンに詰まった缶とペットボトルの詰め合わせを彼に差し出した。
青い時計台は夜の10時05分を指していた。バックライトが壊れていてとても見にくい。
僕はいま、とある川の橋の袂に棲息している二人のテント前にいる。
果たして彼らの存在を意識し出してからどれくらいの月日が経っただろうか。
「ああ、ありがとうございます」
初めて至近距離で見る彼の顔は浅黒く、エッジの効いたスポーツグラスをかけていた。
「ペットボトルも混じってるんですけれども」
「そのままそこに置いてくれれば大丈夫ですよ、ありがとうございます」
予想以上に精気に満ちた笑顔で彼は僕に言った。
カンッ、カンッ、カンッ。
すこし離れた川沿いの堤防の隅で、彼の相方と思われる白髪の男性が銀色の杖とスニーカーとで交互に音を立てながら缶を潰している。
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