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部屋に入ると、まず目に飛び込んだのは、ベッドに横たわっているエリカだった。悪い夢でも見ているようでうなされており、寝汗もかいている。掛け布団などはかけられておらず、代わりに腕には包帯が巻かれている。すこし血も滲んでいるようだ。この部屋は狭く、この狭い空間にはベッドの他にも本棚がある。
憐:エリカ!!
憐はベッドに横たわっているエリカへと駆け寄る。
憐:おい、しっかりしろ。エリカ! くそ、呼吸はしているけど、うなされている。さっきの呪いの影響か? さっきの文章だとエリカを助けるには男を殺したうえで研究所も破壊する必要がある…どうすればいいんだ。
エリカ:……。
憐が悩んでいるとエリカが憐の袖を掴む。
エリカ:憐くん、私が自爆スイッチを押すよ。だから本物のエリカを連れて逃げて。
エリカは儚げの笑顔で憐に問いかける。
憐:何馬鹿なこと言ってるんだ…それじゃ意味がないんだよ!
エリカ:だってそうしないと憐くんと本物の私を助けられないでしょ?
憐:…くそっ、そんなのってありかよ。何か方法があるはずだ! 二人を助ける方法がっ!
憐が本物のエリカが寝ているベッドを強く叩く。
憐:まだ、時間は…ある。なのにエリカを助けれられる方法が…。くそっ!
エリカ:憐くん、私ね、今日すごく楽しかったよ? 人生で1番!こんなに笑ったのも本当に久し振りだったし、憐くんとデートできて本当にうれしかったの。だから、本物の「私」とも楽しい思い出をたくさん作っていってあげて。
憐:そんなの…そんなのって……。ダメだっ!!
エリカ:えっ!?
憐:今日この瞬間を楽しんだのは今目の前にいるエリカだし、あの瞬間の変顔や笑顔は目の前にいるエリカだ。一緒に過ごした時間に「本物」も「偽物」もない。それが「オリジナル」であろうと「クローン」であろうと俺があの「一瞬」を過ごしたのはお前なんだよ。
エリカ:……。
憐:だから、だから。何とかして助けてあげたかった。でも、俺は……。
エリカ:ありがとう、憐くん。きっと「私」は君のそういうところに惹かれたんだと思う。いつでも誰かに寄り添える優しい憐くんのことが大好きだよ。
憐:エリカっ!!
憐はエリカの腕を引いて抱きついた。
エリカが抱えていたペンタゴンが二人の間に挟まれる。
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