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憐:エリカごめんな。最期につらい仕事を頼むことになる。
エリカ:良いんです。憐くんのためになることならお安い御用ですよ。
憐:全く、相変わらずの自己犠牲精神だな。
エリカ:ここまでできるのはあなただからです。
エリカはそう言うと憐の腕の中から出ようとした。しかし、それ以上の力で体を固定され、憐に唇を奪われた。
エリカ:っ!?
憐:これはエリカとの最初で最後のキスだ。
エリカ:はい……。
憐:……ありがとう。エリカ、俺からの最期のお願いだ。二度と悲劇を繰り返さないために、この施設を破壊してくれ。
エリカ:はい!
憐:俺はエリカを担ぐ、ペンタゴンはエリカが面倒見てくれ。
エリカ:もちろん、最後まで面倒見ますよ!
二人は研究所の出口まで歩いていく。
エリカ:憐くん、本物の「私」の面倒ちゃんてみてくださいね。あと、はい、ペンタゴンです。
憐:もちろん面倒見るよ。だからエリカはペンタゴンの面倒を見てくれよ。ちゃんと大切にするんだぞ?
エリカ:え、大切なペンギンのぬいぐるみですよ。それを私に?
憐:大切なペンギンのぬいぐるみだから、エリカに預けておくんだよ。
エリカ:ずるいですよ。そんなの……。覚悟が揺らいじゃうじゃないですかっ!
憐:俺にはほら、エリカとおそろいのイルカのキーホルダーがあるから!
憐はスマホにつけた青色のイルカのキーホルダーを見せる。
憐:今日のできごとは全部二人だけの秘密の思い出だ。
エリカ:……はい。
憐:じゃあな、エリカ。
エリカ:はい、憐くん。今日はありがとうございました。
憐:こちらこそ、ありがとう。ちゃんと俺の動画は消しておけよ?
エリカ:嫌です!
憐:そうかよ、それなら俺も変顔永久保存しておくからなっ!
憐はそう言うと本物のエリカを担いで山道を降りていく。
クローンのエリカは研究所の扉を閉めるときに何かをつぶやいたがそれが憐の耳に届くことはなかった。
憐がエリカを連れて山を降りたとき、山の方からドンという大きく鈍い音が響いた。地震のようなものが起こった。振り返れば、そこには大きな花火が上がり続けていた。ドン、ドン。鮮やかな色の花を咲かせては、宙で消えていく。遊園地から上がった花火ではないのは確かだった。
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