後日談 ーある日の夜明け前ー

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後日談 ーある日の夜明け前ー

ふと、聞こえた小さい音に目が覚める。 寝台に横たえた腕で隣を確認する。 温もりは残っているが間抜けの殻になっている隣に一度眉を潜め、少し思案して結論に至る。 (……なるほど) ゆっくり、なるべく音を立てないように起き上がり周囲を見渡す。 思った通り部屋の扉が薄く開いていた。 そろりと寝台を抜けて足音を潜めて室外へ。 そのまま階段を降りて一階の浴室の方へと足を進めた。 (ん、予想通りだな) 扉の隙間から灯りを確認し、そっと扉を開くと、裸の上に大きいシャツのみを羽織りいそいそと何かを探す人影があった。 その姿にアルベルは口元を緩めた。 (さてどうしてやろうか…あ) そうだ。と思いつき、そっと中は体を滑らせた。 背後の気配に気付かないユリーナに、これ幸いと近寄って腕を伸ばす。 「何してるの?ユリーナ」 「ひっ!!!!?!!?」 ギュッと後ろからの拘束に体を震わせて、油の無い歯車のように固く首を動かして後ろを振り返るユリーナ。 アルベルの顔を確認して安心したのか、抱きとめた体から力が抜けるのを感じた。 「あ、アルベル様…!びっくりさせないでください…!!」 「ごめんごめん。ユリーナが可愛い格好だからつい。」 「え?……あっ!こ、こ、これはその、仕方ないことですので…っ!!!」 「ふふ。わかってるよ」 昨夜はお風呂上がりのユリーナをタオルで包みそのまま部屋に連れ込んだので、彼女の衣服は部屋になく、今着ているのはアルベルのシャツだった。 妻の中々見れない可愛らしく、油断し切った姿にアルベルは心躍らせていた。 無事結婚を果たしたアルベルは自身でアゼストに提案した領地巡りの準備もかねて、屋敷を離れてユリーナと二人、小さな民家で過ごしていた。両親には屋敷で支度をすればいいだろうと言われたが、アルベルが耐え切れなかった。 長年想い、拗らせたこともあったがやっと手に入れた最愛の妻との時間を使用人といえど他の者に邪魔されるのが嫌だったのだ。 ユリーナにも当初は心配されたが、どの道領地を巡り始めれば家の大きさなど気にすべき点ではない。と言い切って二人で越してきた。 (お陰でユリーナのこんな姿も見れた) 恥じらうユリーナに微笑むと、さらに照れたように顔を伏せてしまった。 よく見ると耳も、首まで赤くなっている。 今まで、というか今もなおなかなか侍女時代の固さや真面目さが丸くならないユリーナは、二人でいてもキッチリしていることが多かった。 それ故に今の状況はかなりイレギュラーなのだろう。 「恥ずかしいの?」 「当たり前です…!!!」 可愛い。すごく可愛い。 恥じらうユリーナの姿を少し堪能したアルベルの中で悪戯心が疼いた。 お腹に回していた片手を滑らせてユリーナの下腹部、尻、太腿を撫でて、閉じられた脚の付け根に手を忍ばせて割れ目に沿って優しく撫でつける。 昨夜散々可愛がったそこは柔らかいままで、 その上何も身に纏っていないのですぐに濡れた感触が指を伝う。 「あっ…、や…」 「昨日ユリーナが寝てしまった後きれいにしたのに、少し濡れてるね?」 「そっ!な、っ…?!」 「覚えてない?何回も達して寝ちゃったの」 「お、っ覚えてないです!!」 この反応、覚えているな。 ユリーナは嘘をつくのが下手だからわかりやすい。 クスクスと笑いながらも指を優しく押し込むと、くちゅ、と水音が聞こえた。 ビクッと体を震わせたユリーナを尻目に少しだけ指をさらに押し込む。 「ユリーナ?ここ、どうしたの?」 「んっ…ゃ」 すり、と両膝を擦り合わせてアルベルの腕をきつく挟むユリーナ。 押し込んだ指を浅く出し入れするとさらに体を震わせて耐える姿がひどく煽情的で、思わずこのまま押し倒しそうになる。 「ユリーナ教えて?」 「ぁ…や…しらないです…っ」 「本当に知らないの?」 「うぅ…っ、指、だめ……」 ユリーナは浅いところが好きだもんね?と囁くと指を咥える力が一瞬強くなった。 (ああ…可愛い。こんなに幸せでいいのだろうか……) 思わずユリーナを捕まえる腕に力がこもる。 それを感じたのか、ユリーナも少し振り返りアルベルの表情を伺った。 目が合うと潤んだ瞳が光り、朱に染まった頰が愛らしさを倍増させていることに気付く。 (う…可愛い……) 王位継承を退いたとはいえ一国の王子であることには変わりないアルベルだったが、どう頑張ってもユリーナには勝てない。 「ユリーナ、このままここでしたい?それとも部屋に戻る?」 「なっ……し、しない、という選択肢は…」 「ユリーナがしたくないならしないけど…そうとは思えなくて」 「はうっ!」 浅く動かしていた指をぐ、っと深くへ押し込んだ。 愛液で溢れている道を探るように指を動かすと、ユリーナの脚はぷるぷると震え出す。 「あ、ぁう…だめ、アルベルさま、おやめくださっ……!」 「ユリーナ。僕は君がして欲しそうだからしてあげてるだけだよ」 「し、してほしくなんて…!」 「…ないの?」 むちゅ。とふっくらした唇に口づけを落として目線を交わらせる。 アルベルは自分で言うのも何だが、ユリーナがアルベルに相当弱いのをわかっていた。 とくに困ったように眉を下げて瞳を覗き込めば、ユリーナは焦り出す。 「ぁ、や…ずるぃ……っん」 「ねぇ、ユリーナ?嫌?もう僕としたくない?」 「ちがっ…そうでは、なくてぇ…、!」 脚に力が入らなくなってきたのか、抱き止めるアルベルの腕にしがみつくユリーナ。 ああ、あと少し。 そう思った所で指を引き抜いた。 「ぁ……ぅ…?」 突然離れていった刺激にユリーナはつい、何で?とアルベルを見上げた。 アルベルは頰が緩みそうになったのを堪えて、困った表情を留める。 「ユリーナが嫌だって言うから…」 「あ…ち、ちがくて…」 「まだ朝まで少し時間があるし、戻って寝ようか」 「うぅ…あ、アルベル様…」 力を抜いて離れようとしたアルベルの腕を静止するように捕まえるユリーナ。 アルベルはわざと「どうしたの?」と声をかける。 「あの…その……」 「うん?何?」 「ぅ…つ、続きを……ぁの、……お部屋で…」 アルベルの瞳を射抜くユリーナの瞳は涙で潤んでいた。 ユリーナがこうして恥ずかしがりながらもちゃんと求めてくれることに、安心と嬉しさにアルベルの心は浮き立つ。 「姫のお望みにお応えしましょう」 「も、もう…!!」 「おいで。部屋までエスコートさせてもらうよ?」 「ぅ…はい、アルベル様」 素直に身を委ねてくれるユリーナを横抱きにして2人、浴室を後にした。 (本当に幸せだなぁ) アルベルの首に腕を回してしがみつくユリーナは、アルベルがこの上なく緩み切った表情で自分を運んでいることに気付くことはなかった。 おしまい。
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