突然の遺産相続

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突然の遺産相続

祖父が死んだと聞いても、男の心に取り立てて動きはなかった。 生まれてから20年間、一度もあったことのない血縁だ。 何かを感じろというのが無理な話だろう。 ただし、祖父の遺産が全て自分に相続されるというのを聞いた時には心底驚いた。 「なんで、俺に」 「遺言状にそう書いてあったんだから仕方がない。  父さん、お前にとってのじいさんになるか。  あの人は子供の私達から見ても何考えているかわかんない人だったからな」 「遺産って、まさか負の遺産。じゃないよな。借金とか」 「それはないだろ。  あの人は金だけは持ってたからな。私も随分仕送りをもらっていたし。  金を貸してることはあっても借りてることはないだろ」 「なんでそんなに金があるのさ」 「あの人は発明家でな。色々な特許とかも持ってたし、色々な論文とかも書いてたしな」 父から聞いてみると家の中にある「物質転送装置」「高速睡眠装置」「精神をゲームにぶち込んで遊ぶ装置」など様々なものを発明したのが祖父らしい。 「寝ても覚めても発明ばかりしていたなあ。  よりよい生活とよりよい人生を常に追い求めてる人だった」 「これって、遺産争いとか起きるパターンなんじゃ」 「誰と?」 「そりゃ、親戚とか、兄弟とか」 「会ったことあるか?」 「ないな」 「そういうことだよ」 どうやら遺産の相続の権利者は、男と男の父親しかいないらしく、父親としても息子と遺産争いをするつもりはないらしい。 実質的に相続の権利者は男一人ということだった。 「じゃあ、俺は億万長者ってことか」 「そういうことだな。この奇妙な条件さえクリアすればだが」 遺言状の最後にはこう書いてあった。 『遺産の相続人は、一年間、指定された館で生活をすること。   そこで私からあなたへ、与えられる全てを譲り渡します』
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