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彼は俯き、涙を流していた。
そして、私はその様子をぼんやりと眺めていた。
白い椅子と机…
彼と私は椅子に座り、黙っていた。
他には何もない空間で、ただ時の流れるまま、沈黙していた。
彼が悲しみに暮れる様子を見つめながら、私は思った。
彼の行動は、悪いことだったのか…
少なくとも、私はそんな風には思わない。
私は、被害者ではないからだ。
少なくも、この数日、彼と過ごす日々のなかで、嫌な思いをしたことは、一度もなかったから…。
背後から近づく足音に耳を澄ませる。
安心と不安を掻き立てる音…
その音は俯いている青年の前で、ぱたり、と止まった。
彼の前に、静かに小箱が置かれる。
そして、あたりに低い声が響いた。
「これで満足か…」
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