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ありがとう
廊下を歩いていて
「ありがとう」と声がした
どうして急にそんなこと言われたんだろう?
振り向くと二人の生徒がニコニコ笑っていて
片方は「どういたしまして」と言っていた
……ああ そっか
私に言われたんじゃなかったのか
考えてみれば当たり前なのに 私に言われるわけないのに
何だかポッカリ穴が開いた気分だった
虚しいのか寂しいのか悔しいのか 全然何も分からない
その日 たくさんの人が「ありがとう」というのを聞いた
私は悲しくなった
だって私 今まで「ありがとう」なんて言われたことないよ
手伝っても頑張っても そんなの言われたことないよ
いつもうつむいて帰っていた
いつも下向いて登校してた
いつも誰の顔も見ないように過ごしてた
目を合わせず 顔を見ず ただ霞んだ視界の向こうに地面を見て
いつもいつも そうやって過ごすのが日常だった
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