蒼い蒼い空の果てへ……

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「私だけ?」 私の言葉に、朝倉中佐は言った。 「本航空隊の任務はたった一つ……長躯布哇へ長距離偵察をして在泊中の敵艦隊の規模を偵察するただこの一つにある。 従って、貴官は明後日に特別仕様の偵察機を立川で受領し、完熟訓練に励んだのちウエーキへ飛ぶことになる。」 朝倉中佐の言葉に私はつい言い返していた。 「布哇へ……ですか?」 私はラバウルで聞いた参謀簿言葉が真実だったことを改めて認識した。 今まで飛んだ距離よりももっと遠い敵の心臓部への飛行は……そう、私を虜にしてしまったのである。 私の心臓の鼓動音がいやが上にも高鳴るのが自分でも分かった。私の言葉に朝倉中佐は言った。 「貴官、前任地で聞かされていなかったのか?東機関というアメリカにある諜報機関から、敵は年明けから対日戦への本腰を入れるという情報が入ったらしい。 今、アメリカは対独7割対日3割の比率で戦争をしているが、やっとこさ本気になって徳俵から日本を押し出そうとしているのだ。」 朝倉中佐はそう言って次の煙草に火を点けた。 その翌々日私は東京立川の陸軍飛行場へ特別機の受領に向かった。 特別機は、私が載っていた一〇〇式司偵のⅢ型で、可能な限りの長距離行動がとれる様工夫がなされていた。 当初複座式だったこの機からは偵察員の座席が取り払われ代わりに増加燃料を入れるスペースが設けられ、機の下部には800kg魚雷よりも大きな増加燃料タンクがしつらえてあった。 これにより、機は約7,000kmを無補給で飛行できるとの事であった。 早速試験飛行を願いでる、機の具合はラバウルで乗っていた機とは違い全ての操作が癖が無く滑らかだった。 その日は15分ほど飛んだ……発動機の音も静かで、私はこのまま空の彼方に吸い込まれていくかのような錯覚を受けた。眼下に東京を見下ろしながら私の心はその先の空の彼方にあった……こいつなら私に空の彼方を見せてくれるとそう思った。 本格的な完熟訓練は明日からとなる。
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