蒼い蒼い空の果てへ……

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「撮影修了!」 後部座席から姉川三飛曽の声が伝声管を通して伝わった。 「よし、とっとと逃げるぞ!荒っぽくやるからしっかりしがみついてろ。」 私はそう伝声菅に叫ぶと操縦桿をぐいっと左に切ってフットバーから足を軽く離し、発動機の回転数を一気に上げた。 「後方、敵影無し……対空砲火も無し……。」 姉川の声が伝わる……よし、今回も成功だ、私は333nt(600km)に上がった速度計を見やると遠く朝日が昇り始めた水平線の彼方を見詰めた。 朝の太陽の鈍い光に照らされた雲は金色に染まり、そこがまるで聖書で読んだエデンの園のように感じた。 私の駆る一〇〇式司偵は高度を6,000に保ち150nt(300km)を保ちながらニューブリテン島ラバウルまでの帰途に着いた。 空は雲一つなく……鮮やかな青さが私の目に心地よく映った。 私が空を飛びたいと思ったのは、子供の時に河原から見上げた空だった……。 雲一つなく右を見ても左を着ても果てしなく続く美しい青い空……この空の終わりはどこにあるのだろうか?空の果てがあるのなら行ってみたい、小さなころの私はそんなことを考えていた。 そして、私の空に対する興味は大きくなってから益々膨らみ続け、その結果予科練に入り、甲種偵察機操縦士として現在操縦稈を握っている。 その日、私はラバウルを夜間に発進し、長躯エスピリッツ・サントへの偵察飛行に出かけていた。 後部座席の偵察員はペアを組んでから3ヵ月になる姉川三飛曹だった。 私より4つ年下で福井出身の明るい男だった。 帰路は、ガ島の敵の哨戒圏の外側を低空で通過し、ラバウルへ戻ったのはエスピリッツ・サントを出てから6時間近くがたった午前10時だった。 機が着陸するとわらわらと整備兵たちが飛び出してきて機を固定させると私と姉川が降りる手伝いをしてくれた。 私はいつも通り司令室へ報告に、姉川はカメラを片手に現像室へと別れた。 司令室では、中佐である司令と数人の参謀が私を出迎えた。 「申告します。海軍中尉真鍋義人他1名は、本朝未明エスピリッツ・サント島での敵情偵察を成功し無事帰隊致しました。」
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