硝子の宝箱

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 硝子に生きたまま閉じ込めたものは、すぐには死なないんだ。もがいてもがいて、息ができなくなって最後には苦悶の表情で飾られる。  彼女はずっとそれを、キレイ、って眺めていたんだ。  だから、僕も彼女に倣って、もがき続ける彼女の前に座る。前に座って『キレイ』な彼女を見続ける。  酸素が薄くなっていっているのか、彼女はさっきよりも必死に硝子を叩いている。どんな彼女もステキだと思う僕は、その姿をうっとりと目に焼き付ける。  顔が紅潮していくのも可愛らしい。キレイだ。  彼女の硝子ケースの隣に僕の左腕を飾るのを、今からとても楽しみにしている。  僕は愛している彼女の宝箱を彼女ごと愛している。愛しい彼女が詰まった宝箱を、僕はこれから大切に管理するんだ。  そのためにも、彼女がどんな風にキレイでステキな展示品になるのかを見届けなければならない。  僕に向かって何か叫んでいる彼女に微笑みかけて、そっと硝子越しに口付ける。  愛しい彼女は硝子ケースに入ったまま、僕を死の瞬間まで見続ける。彼女の死を永遠に閉じ込める。  彼女は永遠に僕だけを見続けるんだ。
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