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彼女基準の彼女だけの宝箱だ。その中に、僕もいる。なんてステキなんだろう。
いつしか僕は思うようになっていた。
彼女がキレイだと集めた中に、彼女自身がいたらもっとステキなんじゃないかと。だって、彼女はあんなにもキレイだ。キラキラと輝く瞳で、キレイなものだけを見続ける。キレイなものを探して毎日を生きる。
キレイに囲まれ続けた彼女は、どんなことがあってもキレイでステキなんだと僕は思う。
だから、この世で一番キレイなものを見せてあげる、って僕は言ったんだ。彼女も、見たいわ、って喜んだ。
僕がこの世で一番キレイだと思うものは彼女だ。僕はニッコリと微笑みながら、彼女を姿見の前へと誘った。彼女は生まれてから一度も鏡を見たことがない。水に映った姿も反射して映った姿も、どういうわけかぼやけてよく見えなくなるのだった。
彼女の目に、初めて見る彼女の姿はどう映るのだろう。
「まあ、キレイ」
口にした瞬間、彼女は硝子の中に閉じ込められた。必死の形相で硝子を内側から破ろうとしていたけれど、そんな姿もステキだ。
彼女を見ていた僕は知っている。
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