目隠し金魚と出口のない水槽

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「まるでお母さんみたいだ」 「俺もそう思った」 「でも何だかんだ言ってお似合いだよね、あの二人」 「うん、まぁ、そうだね」  瀬田に聞かれたらなんと言われるか分からないので、なるべく小さな声で同調した。  すると、白城が唐突に掴んでいた左手に指を絡ませ、ぎゅっと手を握りしめてきた。  急なことに目を丸くして白城の方を見る。 「どうした?」 「いや、別に深い意味はないよ。ただ、俺たちも傍からみたら、瀬田さんたちみたいにお似合いって思われるのかな、って思って」  冗談っぽい口調だったが、その目は真剣だった。  花房は昼間の買い物に行った時、ショーウィンドウに映った二人の姿を思い出して苦笑した。 「どうだろう。ぱっと見ではお似合いとは思われないかもな」  誰が見ても美しいと思うだろう顔立ちと若さを持ち合わせる白城。そしてお世辞でも褒められることのない容姿の花房。  花房がゲイであることを知る人間が見たとしても、二人が付き合っていると考える人間は皆無だろう。  そんな花房の卑屈な胸の内を知るよしもない白城は、不満そうに頬を膨らませた。 「そこは自信満々に『きっとお似合いだと思われてるよ』って返して欲しかったな」 「そんな返答をしたら、瀬田さんから即座に退場を言いつけられるだろ。まだ全然飲んでないのにもったいない」  ほとんど口をつけていないグラスを握って、苦笑しながら答える。  しかしその返答にますます白城はむくれてしまった。 「さっきから瀬田さんのことを気にしてばっかり」 「そりゃあ、あれだけ恐い人をスルーはできないだろ」 「いちゃつきたいっていう俺の気持ちはスルーしてるくせに」  なおもいじけ続ける白城に、花房は小さく溜め息を吐いた。  これは下手をすると面倒な方向に長引きそうだ。そうならないためにも早く今のうちに手を打っておかなければ……。  花房は自分の手に絡みつく白城の手をぎゅっと強く握り返した。
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