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私の頭上に高く吹く風は、夏を追い立てて通り過ぎていくようだった。
片田舎の墓地の片隅の、周りに比べてもことさら小さな墓石は、新品のはずなのにどこかうらぶれている。
周囲を林に囲まれた、猫の額のような控えめな墓地には、他に誰もいなかった。
高校二年生の九月、私は生まれて初めて学校をさぼった。
――そうだ、確かに初めてだ、「さぼった」のは。
太陽のさらさらとした光線は、正午だというのに、ずいぶんか弱い。
初秋というのはこんな季節だっただろうか。
名前も知らない鳥が鳴いた。気の早く枯れた落ち葉が、風に震えもせずに伏していた。
幼馴染の冬也のこのお墓は、冬也の父親が知っている中では一番安い、中国産の白御影石だと聞いた。
今、私がかかとで叩けば、壊せるんじゃないかと思えるくらい、目の前の墓石はあまりにも白々と空しかった。
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