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 三つ目のアウトによってスコアボードのアウトカウントが消えた。バックネット裏から聞こえるまばらな拍手を聞きながらマウンドを降りた俊也は、一回表の得点欄に表示された『4』という数字に歴然とした力の差を感じた。  強豪と呼ばれるほどではないが、ここ数年初戦敗退がなかったチームとの対戦が決まった時、俊也は落ち着かない気持ちを味わった。負けるだろうという諦念の一方、勝てたら話題になるかもしれないと密かな期待を抱いていたものだが、ボールを投げるたびに目が覚めていくような気がした。  相手のベンチを見る限り、サインを出していた様子はほとんどなかった。相手打線は奔放に打つだけで四点を奪った。数年間の最高成績が三回戦進出という、県内ではそれなりでしかない強さの相手の、大ざっぱな戦い方さえ抑えられないという現実は、投手として過ごしてきた三年間を踏みにじられるようで胸が締め付けられた。
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