2/19
2人が本棚に入れています
本棚に追加
/86ページ
 試合開始の十四時にマウンドへ登った俊也は、激しく突き刺さる日差しの中で投げることを強いられた。スリーアウトを取るまでにかなりの球数を費やしてしまったこともあり、俊也は今すぐベンチに座り込みたいところだったが、反撃の前に覇気の無い姿をチームメイトに見せるわけにはいかない。俊也は全員を集め、円陣を組んだ。 「逆転するぞ!」 俊也が気勢を上げ、チームメイトもそれに応えた。落ち込んだ気分は仲間たちの士気に満ちた声で上向いたが、相手チームのウォーミングアップに高揚感も冷めていく。投球練習を始めた相手投手は外野まで飛ばすのも難しそうな速球を投げていたし、内野手たちの動きにも隙はない。工夫がなければ誰も出塁できずに終わりかねなかった。  ウグイス嬢が打席に入る一番打者の名を読み上げ、それに応じてレフトを守っていた矢沢が右打席へ向かう。それを送り出すように、ベンチの真上からはトランペットの音色が聞こえてきた。
/86ページ

最初のコメントを投稿しよう!