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 俊也にとっては不意打ちのような質問だった。最初に応援の話を持ちかけたのは自分だが、相手をその気にさせるように働きかけた覚えはない。一人きりの応援になるかもしれないという話もしたが、彼は超然としていた。 「応援をしてくれって頼んだだけだよ」 「何の見返りもないのに、日陰もない応援席で、たった一人でトランペットを吹き続けるっていうのか。変わった奴だな」 「ああ、ちょっと変な奴だから」  俊也は顔をほころばせた。 「友情に報いることが大事なんだとさ。強いて言うならそれがあいつの中では理由なんだろうけど」  自分が言ったわけではないのに、口にすると気恥ずかしくなる言葉であった。今時何かの行動を起こすには弱い動機だと思ったが、彼はそれに突き動かされてただ一人の応援に身を投じているのだ。 「何にしても、応援してくれるならありがたい。応援は派手さでも規模でもない、やる気になれるかどうかが大事なんだからな」 「そうだな。それで、どうだ」  少しためらい、俊也は訊いた。 「早く打ちに行きたいぐらいだな」  三番の岡田が倒れた今、八番打者の伊藤の打席は持ち越しになった。
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