私の夢

1/1
2人が本棚に入れています
本棚に追加
/1ページ
「ぼくの『ゆめ』は、つよくてやさしいヒーローになることです」  保育園の発表でぼくは両親を含めた皆の前でそう言いました。  その時、発表を聞いた父親は笑っていた。  ぼくの名前は長谷川 孝太(はせがわ こうた)、4才。  好きなものはアンパーマン。強くて、かっこいいから!  嫌いなものは野菜。美味しくないから!  休みの日は、お父さんに悪役のバイキンをやってもらって、退治するんだ!  ぼくはいつも正義のアンパーマンをやって、皆を守るんだ!  そうして時は流れ、  小学生になり中学生になり、高校、大学となり社会人になった。    私の名前は長谷川 孝太、35歳の大手の会社に勤めている。  好きなものはランニングとピザ、嫌いなものは特に浮かばないかな。  今日は休日で、今年で4歳になる一人息子の慶太(けいた)と妻のかなえと共に近場の公園に散歩にでかけた。  慶太も年々大きくなり、数年前の生まれた時は軽々と持てたのに今では少し重くて長時間は持てなくなった。こんなところに子供の成長はとても早いことを実感させられる。  最近家族で公園に行くと、慶太にバイキン役をするように言われる。  あのアニメ、私が子供の頃によく見ていて私も親に言ってごっこ遊びをしたっけな。あの時は色々なキャラをいじめるバイキンが嫌いで、それを父親にやってもらって、ヒーローごっこをやっていたっけ。  気づいたら、私がバイキン役か。  そんなことを考えていると、息子がヒーローの掛け声を言いながら私にぶつかってきた。  うわぁーといいながらやられたフリをすると、息子は凄く嬉しそうに笑っていた。  何回か繰り返し遊んだ後に、私の体力が先に無くなったのでジュースを買うことを条件にベンチで休みをもらった。  その時、ふと気になったので息子に聞いてみた。  「慶太、夢ってあるかい?何になることだい?」  慶太はベンチでジュースを飲みながら、いきなりの質問に少し考えて私にいった。  「ぼくの『ゆめ』は、つよくてやさしいヒーローになること!」  それを聞いた私は笑いながら、あの時父親が笑っていた理由がわかった。  思わず 「どうやら、親子ってのはいつまでもそっくりなんだな」  そう・・・・呟いた。  私の呟きは、瞬く間にこの青く澄み渡った空に消えていった。  
/1ページ

最初のコメントを投稿しよう!