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「うわーソレ美味そーじゃん、もーらい!」
「ちょっと桐原、それユウコちゃんにあげようと思って作ってきたのに!」
昨日家で作ったクッキーを学校に持ってきたら思った以上に好評で、調子に乗った私はよし今度は隣のクラスのユウコちゃんにも持っていこう!と意気込んできたのに、あっという間に隣の席の桐原に食べられた。
「まあまあ、俺と蓮見の仲じゃん」
「桐原とそんな仲になった覚えはございません。ていうか桐原、今日の1時間目は英語なんですがずいぶん余裕ですねえ?」
「…それを早くいえよ!」
了解もなく桐原は私のかばんから英語のノートと教科書を抜き取って何やら写し始めた。そういえば昨日桐原の前の席まで英訳当たってたな。
毎週水曜日の1時間目は英語。英語が苦手な桐原は、このときだけはまるで気配を消そうとしているかのようにおとなしくなる。いつもは落ち着きがなくて授業中に後ろ向いたり思いっきり眠ってたりしてるくせに、サッカーをしているときの攻撃的な桐原の姿はどこへやら、という感じだ。
小学生のようにじゃれ合ったり口げんかを繰り返す私たちを見て、時々『2人は付き合ってるらしい』とかいってる人もいるけれど、残念ながら前述の通り私と桐原はそんな仲じゃない。例えていうならきっと性別を超えた悪友?なんていうと『ホントに違うの?』なんて疑いの言葉を投げかけるわりには嬉しそうに去っていく女の子たちの多いこと。英語のテストで12点しかとれないようなヤツなのに、やっぱり1年生でインターハイ常連校の名門サッカー部レギュラーというブランドは大きいのかな。
なんてね、本当はずっと前から知ってる。
上級生の女子から『友也くん』とか呼ばれてかわいがられてることも。
同級生から先週の放課後告白されてたことも。
そんなとき、桐原は私が見たこともないような大人の顔をしてるんだ。
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