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4
俺は真っ白な霧が立ちこめる広い砂丘の真ん中に座り込み、ただ熱い涙をこぼし続けていた。何かを求めているのか、探しているのか、引き留めているのか、それは定かではないが、何かを訴えて必死に泣き叫んでいる。泣いても泣いても涙は足下の大量の砂に吸い込まれて消えていく。白い霧の向こうになだらかな坂が見えた。波打って見えるのは、すべて砂だからだろうか。霧は湿っていて涙でぱりぱりになった頬を不快に撫でるのに、背後からは乾いた風がごう、と吹くのが不思議だった。霧は半ば雨のようになって寒いくせに、砂は肌を灼くほどに熱い。ここには不快なものが全て存在していた。普通なら打ち消し合うものですら、共存している。
口を大きく開けて自分が叫ぶ声に耳を傾けると、喉の奥から引き攣れたようなかすかな声が聞こえる。
「俺が」
自らの喉が叫び、その叫びが耳に届くたび、胸がめちゃくちゃに破かれるように感じた。布を力任せに引き裂くときのようだ。そして中の内容物がぶち撒かれるように足下の砂に滲んでいく。
つばさの青白い顔、白いトレーナー、青いジーンズ、そのすべてを覆い尽くした、赤茶色。
思い出せば思い出すほど胸の中を、尖って沁みるものが滑り落ちていく。胸元を掴めばさらに心の中身が砂の上にぼたぼた垂れる。苦しくてその上にうずくまれば、酸が肌を溶かして、熱くて痛い。でももうどうでもいい。
その時、砂の丘の向こうから大きな紫色の雨雲が駆けるように流れてきた。俺の頭上に陣取ったグレーの雲は、大粒の雨を降らせた。バケツをひっくり返したように俺に降り注いだ雨は、生ぬるくて、優しい。はっと見上げると、稲妻がきらめき、俺の頬を照らした。肌を溶かす酸も、頬に張り付いた涙も、熱い砂も、全部雨が持ち去っていく。
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