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「今回は、二人のお手柄ねー奢っちゃうから、飲んで飲んで」
レナはそう言って、恵一と郁弥に焼酎を勧める。
「郁弥さんは、ずっとここで皿洗いをするつもりですか」
ふと、恵一が呟いた。大坪氏の遺品整理、というより甥への不審を感じた時の郁弥は、別人かと思うほど鋭く、冷静だった。隣にいた恵一は、その雰囲気に押されて身震いする程だった。
「ん? まあ、ここの仕事は気に入ってるけどな。いつまでもレナさんの世話になるわけにもいかねえしなぁ……」
少々面倒くさそうに、郁弥が答えた。今はレナの厚意に甘えているが、ちょうど自立を考えている。
「あら、そんなの遠慮しなくてもいいのに。でも、いくちゃんには、もっと向いてる仕事がありそうね。探偵とか」
「探偵もいいですが、便利屋はいかがですか。本物の小野木さんから、遺品整理のご依頼を頂いたので、手伝って頂けると助かります。探偵では、骨董屋の手伝いはできませんから」
「いいわね、それ。お客さん達にも、宣伝してあげるわよ」
レナと恵一の言葉に、郁弥は面白そうだと思った。その上、職歴が役に立つなら、言うことはない。
「なるほど、それも悪くないな」
こうして若松郁弥は、便利屋を営むことを決めた。
レナや恵一の紹介もあって、業績は上々。きっと、未来は薔薇色に違いない。
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