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1570話 幼い双子
「可愛い潜伏者だな。いや、伏兵と言った方が適切か?」
「「ひっ……」」
「あまりにも矮小な気配だったから、見過ごしていたよ。気配を隠す技術はまぁまぁだな。しかし、全く動かないというのも不自然だ。他に小鳥や鼠もいたようだが、俺と景春の戦闘で逃げたぜ?」
俺は言う。
チート持ちの俺は、高威力の攻撃を放つことができる。
藩主である景春も、俺ほどではないが強力な攻撃を放つことができる。
その戦闘の余波で逃げない存在は、明らかに不自然だ。
景春との問答や彼の視線がなくとも、いずれはその違和感が確信に変わっていただろう。
「さて……。この2人はお前の何なんだ? まさか、娘ってわけじゃないよな?」
俺は振り返り、景春に尋ねる。
2人の幼女は怯えているだけで、特に何もしてこない。
「…………」
「答えろ。3秒以内だ。3……2……」
「よ、余の……世話係だ。配下の侍の娘で――」
「嘘は良くないな」
俺は言う。
そして、刀を2人の幼女に向けた。
「ひっ!?」
「や、やめて……!」
「ほら、怖がってしまっているじゃないか。景春……お前が虚偽の報告をしたせいで、2人は死ぬことに――」
「よ、余の妹たちだ! 桜花家の……双子の娘だ!」
景春は叫ぶ。
「ほう? 妹……ねぇ」
俺は双子を観察する。
8歳ぐらいだろうか?
まだ小さいが、2人とも美しい容姿をしている。
10代前半くらいの景春とは、成長度合いが異なるが……。
年齢差を脳内で補正すれば、かなり似ていると言っていいだろう。
「どうして障子の影に潜んでいた? 3秒以内に答えろ。3……2……」
「に、逃げ遅れただけだ! 何せ、貴様が突然ここを訪れたものだから、逃がすことすらまともにできなかったのだ!!」
「ふぅん? この期に及んで、まだそんなことを言うのか……」
俺はそう呟きながら、双子に近づく。
そして、その髪を掴み上げた。
「うぅっ……!」
「くっ……!」
2人は苦しそうに呻く。
「おい! やめろ!! まだ幼子だぞ!!」
「だからどうした?」
俺は言う。
以前の俺だったら、こんなことはしなかっただろう。
人の生死だけではなく、肉体的な苦痛や精神的なショックにも配慮していた。
特に、女性や子どもには甘かった。
しかし、今は違う。
闇の素晴らしさを受け入れた今……目的のためには、手段を選ばない。
「嘘は良くない……そう言ったはずだ」
「何を……」
「お前がさっき発動した大技……こいつらが発動を補助していたのだろう? 俺の感覚は誤魔化せんぞ」
「っ!?」
「補助だけとはいえ、なにせ桜花家直系の妖力だ。さぞかし大きな補助効果を生んだだろう。もはや、『ただ逃げ遅れただけの幼い双子』として見逃せる存在ではない」
俺は言う。
双子の髪を掴んでいた手を振り上げ、2人の体を宙に放り投げ……。
刀を一閃したのだった。
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