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1572話 タカシ様…
「さて……覚悟はできているんだろうな? 幼子とはいえ、人の頭部を吹き飛ばすほどの妖術を放ったんだ。もはや、非戦闘員という言い訳は通じんぞ」
俺は双子を睨む。
彼女たちは明らかに怯えているが……瞳の奥には、強い意志が感じられた。
「ふむ? いい目をしているな」
俺はそう呟く。
まだ幼いが……。
すくすくと成長すれば、かなりの美少女になるだろう。
「わ、わたしたちだって……桜花家の娘です」
「ねぇさまだけに頼りっきりには……できません」
「ほう?」
俺は笑う。
そして、刀を構えた。
「心意気だけは立派だな。だが、実力が伴っていなければ意味がない。悪いが、お前たちを殺す」
「や、やめよ! 妹たちには手を――」
「お前は黙ってろ」
「がはっ!?」
俺は景春を再び蹴り飛ばす。
感情の乱れで血統妖術『散り桜』の制御が不安定になっているらしい。
今の彼になら、最低限の魔力や闘気調整でも攻撃が通る。
床に倒れて動けない景春から視線を外し、俺は双子に向き直る。
「さて……。覚悟はいいな?」
「「……っ」」
「天にでも祈ってみろ」
俺は勢いよく刀を振り上げる。
ただ、実際には殺すつもりはない。
脅しだ。
深めの切り傷を負わせれば、幼い双子の戦意は一瞬にしてなくなるだろう。
そして、俺の本気さが景春に伝わり、彼は大人しく降伏するはずだ。
仮に降伏には至らなくとも、景春の精神が大いに揺さぶられることは間違いない。
血統妖術『散り桜』は特殊な上級妖術だ。
心が乱れれば、その発動は引き続き不安定になるはず。
そこを適度にボコることで、どちらにせよ景春は降伏するだろう。
まさに完璧な作戦である。
「さぁ、死ね」
俺は振り上げた刀を振り下ろす。
景春が叫ぶ。
双子が悲鳴を上げる。
だが、今の俺は闇を受け入れ気分爽快。
叫び声や悲鳴を聞いた程度で刀を止めたりは――
『タカシ様……』
「――っ!?」
突然、俺の脳内に声が響いたような気がした。
いや、声だけではない。
どこか見覚えのある美しい少女が、双子を庇うようにして俺の前に立ちはだかった。
……ように見えた。
「う……ぐ……」
ダメだ。
体が動かない。
刀を振り上げたまま、俺は固まってしまう。
『タカシ様……』
再び脳内に声が響く。
だが、もう少女の姿は見えない。
幻聴、そして幻視か……?
いったい何だったんだろう?
今の少女は……。
「「い、今のうち……!!」」
俺の動きが止まっている隙に、双子は俺から離れてしまった。
そして、景春に寄り添い、俺に対して鋭い眼差しを向けてきた。
「……なぜ攻撃を止める? まさか、貴様……」
景春が俺を見る。
その瞳には、希望が宿っていた。
「不殺主義を貫く甘い男だと思ったが……。幼子に対しては、傷さえ負わせない――負わせられないというわけか!」
「……は? いや、俺は別に……」
「ふ……ふふふ! 図星か!! それならば、こちらにもまだ勝機はある!!」
景春が笑う。
ちっ……!
少し妙な展開になってきたぞ……。
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