闇の向こう

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闇の向こう

気が付くと未だ暗闇の中にいて背中の感触は冷たく硬い物の上に寝ているのが分かった。 自分の呼吸で動く胸の高鳴りも感じる。 僕は生きているようだ。 頭もクリアに記憶がある。 そうだ、妹とフェルはどこだ? 上体を起こそうとすると痛みが全身に走った。 「痛い!」 思わず声が出て暗闇に響いた。 「カエデ! フェルさん!」 何度か呼んでみたが虚しく反響だけが残った。 僕は恐怖と痛みに堪えながら四つん這いになり上体を起こした。 そしてまた2人の名を呼んだ。 しかし声さえも暗闇の沈黙に飲み込まれるようで恐怖は更に募った。 僕は目を瞑り全身の神経を集中させ呼吸を整えてみた。 張り裂けそうな鼓動と心拍のバランスが少しずつ整い始め全身に温もりが巡り始めた気がした。 目を開けると恐怖は薄らぎ暗闇をしっかり見据える事が出来た。 すると微かな呼吸が聞こえた。 その方向へ少しずつ移動すると足先に何かが触れた。 「カエデ? フェルさん?」 僕は手を伸ばし探した。 「うう… ジュン… 大丈夫か?」 フェルが蚊の鳴くような声で囁いた。 「ああ、何とか生きてるみたいだ。 フェルさんはどう? どこか痛む?」 「身体が上手く動かせない。 さっきからジュンの声は聞こえていたけど… 声が出せずにいたよ。 でも、ボクの足元にカエデがいると思うんだ。 どこだか触れているけど全然動かないから心配だ。」 フェルは精一杯の言葉をふり絞った。 僕はフェルに触れながら足の方へ移動すると新たな感触を見つけた。
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