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「カエデ? カエデ?」
彼女の手、腕、肩を確認しながら顔を撫でた。
冷たくなったカエデの頬を両手で包んで顔を近づけた。
微かな呼吸が僕の頬に伝わり温かみを感じた。
気を失っているカエデを僕はそのまま腕を回して抱きしめた。
「大丈夫だカエデ。
必ず助ける。
もう少し辛抱してくれ。」
僕は彼女の耳元で言った。
するとカエデの顔が薄っすらと見えた。
僕は何度か目をこすり細めた。
徐々に彼女の顔が明るくなって行った。
周りを見渡すと奥の方から次第に光が見え始め人の声も聞こえて来た。
「おーい、ここだ!
ここだよ。」
僕は助かったと思いカエデを抱きしめた。
「ジュン、助けが来たな。」
フェルも手をかざして目を細めた。
岩や土が崩れる音がして人の声も増えて行った。
すぐに数人が入って来て僕達の所に駆け寄った。
突然辺りが明るくなって一瞬何も見えなくなった。
でもすぐに異様な光景が目の前に広がっていた。
人々は片手に松明を持ち、もう一方で槍のような物を構え、衣類は茶色い作務衣のような物を着てダブついたズボンを履いていた。
髪は長くきれいに2つに分けたお下げ髪で頭には紐のような物を巻いていた。
「お前らここで何してる!
どうやって入って来た!」
中央に立つ1人が叫んだ。
僕は混乱したがひょっとしてここはアザメルなのかな?とも思った。
しかしどうして言葉が分かるのだろうと思い可笑しくなり、やはり誰かの悪ふざけだろうと思った。
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