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「ーーねぇ~。ま~だ~?」  腕を枕にしつつ、ゴロゴロと自分の机に持たれてボクを急かしてくる茜さん。  非難がましい目線をぶつけてくるが、なんでこの人はここまでふてぶてしいんだろう? これがコミュ力強者ってやつだろうか? 「ーーーー」  いつもの事なのでボクはスルーして読み進める。話ながら本を読めるほど、ボクは器用じゃない。  ーー昼休み。サンドイッチ片手にラノベを読み進めていく。  クラスメイトは各々食堂や売店、校庭等で思い思いに時を過ごしているだろう。変にボクに構ってくるのは茜さんくらいだろう。 「ーーふぅ……」  そこから数分後、最後まで読み終えたボクは窓の外を見る。  ーー若干曇ってきた気がする。これは帰りまでに一雨来るかも知れない。 「……あれ?」  そういえば、途中から茜さんの催促が聞こえて来なかったな? 「Zzz……」  見ると茜さんは待ちくたびれたのか、無茶苦茶幸せそうに眠っていた。 (この人は……)  軽く溜め息をついて、声を掛けられた日の事を思い返す。 『ねえ、オタク君。その本貸して?』  席替えの後、人の目線から逃げるようにラノベに目を通していた自分に、茜さんはそう言ってきた。  声をかけられるなんて思っていなかったボクは、混乱して思わず本を渡してしまったのだ。  ーーそこから、茜さんは事あるごとにボクに本を借りに来るようになった。  最新刊が出れば借りに来るし、話題になった過去作や興味を持った作品も借りに来た。  なんで自分で買わないのかと、聞いたことがある。するとーー 『女の子はおしゃれに気を使うのにお金がかかるのだよ』  と、返された。要するにボクは便利な図書館扱いをされているのだ。  ーーそれを理解していながら茜さんに従う自分をだいぶ情けなく思いはするが、正面切って拒めるなら、ボクはこんな風になってはいない。 「ーーはぁ……」  ため息をつきながら、ボクは読み終わったラノベを茜さんの机の上に置いた。  なんとなく居心地が悪くなったボクは、人目を避けるように教室を出てトイレに向かう。  ーーもっと思ったことを言えるようになりたい。  曇った空を見ながら、ボクはそう思った。
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