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女性はわたしに向かって手を差し出す。
「あ、ありがっ……とぁっっ」!
女性に手を借りて立ち上がろうとしたわたしの腰に、田吾作さんが手を添えたので、思わず変な声が出てしまった。
女性は驚いた顔をしたがすぐに微笑む。
「すっごーーい! 今のなに!? アクロバティックショー!?」
立ち上がったわたしの前に、女性の右隣にいた十代後半くらいのギャルが、興奮した様子で話しかけてきた。
金髪に近い明るい髪はくるっくるの巻き髪にされていて、白っぽいニットワンピースに黒のショートブーツ。
つけまつげばっちりの濃いアイメイクをバチバチと何度もしばたかせ、わたしの後ろに立った田吾作さんをうっとりとした表情で見つめる。
「しかもイケメン! なかなかのビッグ待遇って感じ!? いいじゃん、いいじゃん! やる気でるぅー!!」
ギャルがなんで興奮しているのか、さっぱりわからない。
っていうか、さっきのマネキンは?
頭上の穴を見上げる。
黒い闇しかないその場所から、マネキンが落ちてくる気配はない。
ぞっとするようなあの関節のきゅきゅっという音も、聞こえなかった。
その場にいたのは、女性とギャルだけではない。
ギャルの右隣にいたのは、小学生低学年くらいの男の子。
水色のシャツにベージュのハーフパンツという服装は、洞窟の中では寒そう。
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