迷い子たちの群れ

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 対照的なのは、その隣で一抱えサイズの岩に腰掛けている二十代前後の女性だ。  ショートカットに胸元まで大きく開いた紫のシャツ。  体のラインがよくわかるような黒のパンツスタイルが、脚の長さを際立たせている。  パイソン柄のハイヒールを履いた足を組み、細い煙草を吸っていた。  煙草独特の匂いに、OL風の女性が眉を寄せる。 「智美(ともみ)さん、小さな子もいますから、煙草は控えたほうが」    智美と呼ばれたショートの女性は、OL風の女性をちらりと一瞥した後、煙草の煙を女性に向かって吹きかけた。 「きゃっ」  OL風の女性は小さな悲鳴をあげ顔をそむけると、苦しそうに咳き込む。 「ちょっと! あんたなにして……」    ショートカットの女性に食って掛かろうと身を乗り出したわたしの顔の前に、女性が火がついたままの煙草を突き出した。  驚いて動きを止めたわたしに、ショートの女性は黒のアイラインで強調した瞳で微笑みかける。 「私に意見しないでくれる?」    薄い口元が逆さになった三日月のように歪む。  有無を言わさぬ雰囲気に、気迫負けしそう。  苦しそうに咳き込む女性の気配を背中に感じながら、わたしはショートの女性を強く睨みつけた。 「口出しされたくなければ、子供みたいな嫌がらせしないでくれる?」    煽るように口調を真似る。  ショートの女性は細い眉をきゅっと吊り上げ、口元の月が山を描いた。  煙草を背後の壁に叩きつけるように投げる。
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