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「本当に知らない……の?」
「うん。全く」
OL風の女性は困惑した表情で、何故か智美を見た。
智美はその視線に気づいているはずなのに、視線を受け流して涼しい顔をしている。
ちょっと、ううん、すっごく不愉快。
するとレミたんが、わたしの右手をぎゅっと握りしめ、
「知らないなら説明するねぇ? あのねぇ、アルカヌムっていうのはぁ、すんごいゲームなの。わかる?」
と、顔をぐいぐい近づけて言った。
近すぎて、レミたんから甘い砂糖菓子みたいな匂いがする。
「ゲーム?」
「そうそう! ゲームに勝ったらね、なんでももらえるんだよ。欲しいものなんでも!」
なにそれ。ものすっごく胡散臭いんですけど。
「大金持ちになりたい!とかでも?」
不信感いっぱいでそう返すと、レミたんはすごく嬉しそうに首を縦に振った。
「そうそう! もっとだよ! もっともらえちゃうの! 一兆でも十兆でも、そのもっともっと倍のお金でも!!」
「いや、それはさすがに冗談でしょ?」
なんか子供っぽい人だなーなんて思いながら苦笑いしていると、田辺さんが白髪を後ろ手に撫でつけながら、
「いや、それが本当の話なんですよ」
と、レミたんの話を肯定した。
「ちょ……田辺さんまで……まさか、よね?」
尚も信じようとしないわたしに、智美が馬鹿にしたような目を向けた。
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