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「説明してあげる必要なんてないわよ。その女子高生、きっと信用なんてしないんだから」
さすがにカチンときて、睨み返す。
「信用しないなんて言ってないでしょ? 話があまりにも非現実的だから」
「洞窟の天井から落ちてきたビジュアル系オカマと、劣化ギャルの存在の方が非現実的だけどね」
しれっとした顔で毒を吐きかける智美の横顔が苛立たしい。
なんでこんな攻撃的なわけ?
そこに田辺さんが「まあまあ」と笑顔で割って入った。
「彼女は本当にアルカヌムを知らないようですが、参加者だと思います。権利がない者がここに来る事はできませんから」
参加者。
こんな洞窟で、行われる胡散臭いゲームの。
いつもだったら、ないない! って笑い飛ばすけど、状況が状況だけにそれもできない。
自分がなんでここにいるのか、さっぱり思い出せないから。
わたしは攻撃的な智美の視線を無視し、田辺さんへ体を向ける。
余程怖い顔をしていたのか、様子を見ていた蓮君が、慌てて田辺さんの後ろに隠れた。
「田辺さん、教えてください。アルカヌムの事を」
田辺さんはにっこりと微笑んだ後、ゆっくりと首を縦に振る。
「もちろんです。皆さんもよろしいですか?」
周囲を見回す田辺さんに対し、誰もなにも言わなかった。
不機嫌そうに舌打ちをした中年スーツマンと、再び煙草に火をつけた智美も。
そしてわたしは知ることになる。
夢と希望に溢れたダイスゲーム、アルカヌムの存在を。
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