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なんでこう、いちいち棘のある言い回しするんだか。
わたしは智美をスルーして田辺さんと話を続けた。
「勝者になれば欲したものはなんでも得ることができる……そんなうさんくさいゲームのこと、なんで信じたんですか?」
好々爺って感じの田辺さんが欲にくらんで、という想像ができなかったから思ったことを率直に聞いたけど、田辺さんは曖昧な表情で笑うだけ。
それを見ていた美知佳さんが苦笑する。
「みんな半信半疑よ。そんな都合のいい話あるわけないって」
そんな都合がいい話、本当にあるわけない、か。
いつか当たるかもしれないからって購入する、宝くじみたいなものかな。
なんとなく納得したわたしの隣にいたレミたんが、唇を尖らせ、美知佳さんを睨む。
「レミは信じてたし! みんなってひとまとめにしないでよ、田尾っち!」
「あ……うん。ごめんね、レミさん」
レミたんは大きく息を吐き出すと、「冴女っちぃ」と猫なで声でわたしの両手をぎゅっと握りしめた。
「お客さんから聞いたんだぁ。アルカヌムってゲームで大きく人生を変えた人間がいるって! 一生かかっても使い切れない大金を手に入れて、毎日遊んで暮らしてるって!
そのゲームに参加するにはアルカヌムに選ばれないといけないんだけど、レミは信じてたから選ばれたの!」
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