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「でも……」
興奮した口調のレミたんの後ろから、ぼそっとした男性の声が上がる。
レミたんは眉をきゅっとつり上げ、不快そうに振り返った。
「なによ、ゆうたん!」
ゆうたんと呼ばれたのは悠仁さん。
悠仁さんは落ち着きのない様子で、ちらちらとレミたんを見る。
「どうやってここに来たか、みんな覚えてるの?」
どうやって来たか?
「どういう事?」
わたしが悠仁さんに尋ねると、悠仁さんの顔が僅かに引きつった。
「俺達は、いつの間にか集められてたんだ」
「いつの間にか?」
美知佳さんが曖昧な表情で頷く。
「私は、会社で廃棄の書類をシュレッダーにかけていたはずなんだけど、気がついたらここにいたの」
「私は娘のところに、孫に会いに行く途中でした」
「俺と悠仁は女の子と遊びに行く予定だったんだぜ? まじでさ、タイミング悪すぎだってのっ」
「きゃははははっ! うけるー!」
美知佳さんに続いて田辺さん、金髪男、レミたんと続けざまに話す。
なんでみんなそんなに落ち着いてられるの?
どう考えても異常な状況なのに、取り乱す人はいない。
小さな蓮君や、一番常識がありそうな田辺さんも。
異様な雰囲気に気圧されたわたしを残し、会話は続いていた。
その中で分かったことは、全員共通して、なにかをしている時に意識をなくし、この洞窟に連れてこられた、ということ。
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