闇の中の遊戯

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 わたしは飛んできたものを確認した後、智美が立っていた方を振り向いた。  智美は表情の読み取れないような冷ややかな目で、わたしを見ている。   「なにすんの?」  そう、さっきわたしの目の前すれすれを飛んで行ったものは、智美が吸っていた細いタバコの吸い殻だった。 「参加者じゃないっていうなら、速攻立ち去りなさい。子供の好奇心を満たす為に私達はここにいるわけじゃないの」 「智美さん、そんな言い方しなくても……」  美知佳さんが間に入ろうとするが、わたしは智美の目の前まで移動すると、彼女の目を正面から睨みつけた。 「わたしに苛々をぶつけるのやめてもらえる?」  智美は外人のように両手の平を上に向け、首を竦める。 「苛々なんてしてないわ。目障りだけど」  我慢の限界だった。  智美に掴みかかろうとしたわたしを、背後から美知佳さんと田辺さんが引き留める。  レミたんと金髪男がケラケラと笑い、悠仁さんがドン引きしているのが横目に見えた。  それまで遠巻きにわたし達を見ていた三輪さんが、眉間に皺を寄せたまま口を開く。 「こっちは遊びで参加してるわけじゃないんだ! ガキがいると足を引っ張られてかなわんっ」  険しい視線は、田辺さんの後ろにいる蓮君に向けられていた。 「ぼ、僕は……」  蓮君の目に涙が浮かび上がる。  
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