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「離せっ! このオカマっ!」
掴まれた三輪さんの手が、見る見るうちに赤くなっていく。
顔が痛みから引き攣り始めたのがわかった。
「山田さんっ! そのぐらいで……」
美知佳さんが田吾作さんと三輪さんの間に、割って入る。
「そう?」
田吾作さんはすぐに手を離し、三輪さんはほっとした顔で田吾作さんから距離をとった。
右手首には、相当強い力で握られたのであろう、田吾作さんの手の跡がくっきりと浮かんでいる。
そのやりとりをずっと見ていた智美が、田吾作さんの顔を見ている事に気付いた。
観察するように、じっと。
その姿が気にはなったけれど、わたし達は彼等の参加するゲームの参加者ではない。
さっさと立ち去ろうと、気持ちを切り替えることにした。
「美知佳さん、レミたん、田辺さんや蓮君もありがとう。ここがそのアルカヌムってゲームに使われるようなところなら、そこまで危険なものもないだろうしわたし、家に帰る道を探してみる。田吾作さん、あなたはどうするの?」
田吾作さんはこくんと頷き、
「一緒にいくわよ」
と、当たり前のように言った。
あ、一緒に来てくれるんだ。
そう思った時、すごくほっとした。
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