闇の中の遊戯

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 すぐに先程見た田辺さんと同じ画面になる。  しかしサイコロをバックに書かれた文字は、全く違うものだった。 「エントリー完了いたしましたって……どういう事?」  困惑するわたしに、美知佳さんが言いにくそうに口を開く。 「冴女ちゃんが……正式にゲームの参加者として登録されてしまったの」 「……えっ?」  呆然とするわたしの前で、金髪男がにやにやとした厭らしい笑みを浮かべながら、べろっと舌をだした。   「この端末はどういう仕組みなのかわからないんだけど、画面に触れただけでエントリー登録されるの」 「いや、だって、さっき田辺さんの触ったけど」 「あれは田辺さんがエントリーしたものだったから。多分、牧田君が冴女ちゃんに渡したのは未登録のものだったんだと思う」  そこまで言われてやっと気づいたんだ。  金髪男に嵌められたんだって。 「こ、このくそ男ーーっ!!! どうしてくれんのよっ!」  金髪男は平然とした様子で、マットレスの上に座る。 「感謝してほしいくらいだぜ? グダグダしてるあんた等の背中をおしてあげたんだからさー」 「あんた話聞いてたんでしょ? わたしは参加者じゃないって」 「そんなはずない」  否定しようとしたわたしの言葉を、悠仁さんが遮った。 「参加者じゃなければここには連れてこられないから」  そういわれても、わたしに登録した覚えは全くない。  途方に暮れていると、美知佳さんが言いにくそうに口を開いた。 「冴女ちゃん。誰かが、あなたの事をエントリーしたのかもしれないわ」 「誰かが?」    誰が?  そう、自分で自分に問いかけた時、すぐに一人の人物の顔が思い浮かぶ。  行方を晦ました父親だ。  黙り込んだわたしをじっと見ていた田吾作さんが、金髪男の側に移動する。  金髪男は三輪さんとの一件がからか、田吾作さんを警戒していたが、 「あたしにも未使用のもの、渡してくれない?」 と言われ、拍子抜けしたようにぽかんと口を開いた。 「た、田吾作さん! やめときなよっ」  わたしが止めようとすると、田吾作さんは肩を竦める。 「大丈夫よ、冴女。一緒にさっさと終わらせましょう」  そういった田吾作さんの目元が、少し緩んだように見えた。  ひょっとして、わたしの為に参加してくれようとしてるんだろうか。  いや、ひょっとしなくても……  目の表面になにか染み出てきそうになり、慌てて目を閉じた。  絶対にこんなところで泣くもんか、そう思って。  
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