開始を告げる銀

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 日が届かない場所にいるせいか、自分の置かれた状況を悲観してか、寒気が止まらない。  それなのに手の平にはじっとりとした汗をかいていて、すごく気持ちが悪かった。  金髪男のせいで、強制的に参加する事になった、意味不明のゲーム。  ゲームなんてしている場合じゃないのに。  バッグを紛失したらしく、助けを呼ぶこともできない。  ここに来てどのくらい時間がたったのか、空は、母は大丈夫か気になって気が気じゃなかった。  わたしが帰らなければ、空は一人だ。  くそ親父が帰宅している事を願うしかないが、そもそも連絡がつかなかったからこんな事になっているわけで。  やっとゲームが始められるぜーなんて呑気に言っている金髪男を見ていると、金髪を全部引っこ抜いてやりたい衝動にかられた。  そんなわたしの精神状態に気付いてか、美知佳さんが金髪男を背にしてわたしの前に割って入る。 「さ、冴女ちゃん。貴方は情報が少ないし、これからゲームについて詳しい説明をしたいんだけど、場所、移動してもいいかしら?」  場所、と言われ、周囲を見回した。  テレビの中でしか見たことがないような、岩と岩と岩しかない洞窟。  しっとりとした空気と、カビの匂いが体にまとわりつく。  運営が用意したであろうマットレスや松明がなければ、こんなところ数分だって居られる気がしない。  あくまで人為的につくられた状況だと思えるから、皆冷静なのかな。  なんにせよ、情報は大切。  さっさと終わらせて、ここから出る。  そう決めたわたしは、美知佳さんに頷いた。  美知佳さんとレミたん、田辺さんと蓮君、そしてわたしと田吾作さんの六人は、美知佳さんに誘導される形で場所を移す。  金髪男と悠仁さんは二人でマットレスの上で談笑していたし、智美も三輪さんも群れるのは嫌いだと言わんばかりの顔をして着いてはこなかった。 「明かりがなかったら迷っちゃいそうだよね」  先を歩く美知佳さんが、壁の松明を見て苦笑する。  場所を変えると言ってから松明を目印に移動をしているが、途中、二か所も分かれ道があった。  松明があったのは片方だけ。  真っ暗な空間からはなんの音もしなかった。 「もう片方の道ってなにがあるか見た?」  わたしは隣を歩いていたレミたんに尋ねる。  レミたんはきょとんとした顔で、首を横に振った。 「見るわけないじゃん! 真っ暗なんだもん」 「なにがあるかわかんないって、怖くない?」  変なマネキンに追いかけられた事を思い出して口にしたわたしの言葉に、レミたんが顔をしかめる。 「冴女っちって、けっこうグイグイいくよねぇ~」 「グイグイ? そう?」 「けんかっ早いしさ、そんなんじゃモテナイよぉ? ね、たごっち」  そう言ってレミたんは、すぐ側にいた田吾作さんの右腕に絡みついた。  田吾作さんはレミたんの顔を見た後、わたしの顔を見つめる。
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