開始を告げる銀

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「今もね、ゲームが始まるまでに色々調べたいからって、一人でチェックしてるんだよ~~」  レミたんはうっとりとした顔をしていたが、変な感じだった。  巻き込まれたわたしや田吾作さんと違って、ここいいるのは望んでゲームに参加した人たち。  なのに、誰も人生を賭けた一大勝負をする前には見えない。  アルカヌムって、対戦ゲームみたいなものだと思ってたんだけど、違うんだろうか。  ぎりぎりまでチェックしている先生という人物のほうが、やる気満々というか、らしい、気がする。  ここにいる人達といい、自分のおかれた状況といい、不自然すぎる気がした。   (狐か狸に化かされたってこういう状況で使うのかな)  なんて呑気に考えていたわたしは、たどり着いた場所を見て驚いた。  そこは同じ洞窟の中なのに、とても広く、そして、光の集まる場所だったから。  先ほどまでの松明と違い、天井には照明のようなものがあり、周囲を明るく照らしている。  コンサートホールのような広い空間は、床一面にグレーのタイルのようなものが貼り巡らされていて、簡単には端から端まで移動することはできそうにないくらい広い。  入って右側には場違いなアンティーク調のテーブルと黒いレザーのソファーがあり、左側にはレンガ壁の個室のようなものがあった。   「あれ、トイレだよお。中は男女ちゃんと分かれてるし、意外と綺麗なんだよね~~」  トイレ!  色々ありすぎて忘れていたが、そういえばずっと行ってない。 「行ってくる!!」  若干小走りにトイレへ向かおうとしていたわたしだが、背後にもうひとつ足音がすることに気づいて立ち止まる。  まさか、と思いつつ振り向くと、田吾作さんが着いてきていた。 「ちょっと! なんで着いてくるの!?」 「冴女が走り出したからよ」  悪びれない田吾作さんの顔。  バランスのいい綺麗な目が、自分をまっすぐに見つめている事実がとにかく恥ずかしい。  わたしは田吾作さんの視線を逸らすように、顔を横に背ける。 「トイレまで着いてこないでよ」  なんだか大きな子犬に懐かれた気分。  田吾作さんはこくんと頷き、立ち止まった。 「山田さん、ミネラルウォーターがあるので、こちらで飲みませんか?」  美知佳さんが気を利かせ、田吾作さんにペットボトルを渡す。  
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