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首から下は自らの意思に反して、恐怖からか動かすことはできない。
助けることも逃げ出すこともできずに、ただ惨劇を見せつけられていた。
次は我が身だと思い知らしめる為に。
田吾作さんは、怯んだ様子もなく、前をじっと見ていた。
「アタシ達にできることはないわ。腹が立つくらいに」
田吾作さんの口調は変わらない。
でも、松明で照らされた赤い瞳が、炎のように燃えていた。
女性の声は徐々に小さくなっていく。
そして床になにかが崩れるような音がしたと同時に、女性の番が終わったのだとわかった。
刹那。
身長2メートルは超えていそうな長身の『それ』と目が合った。
ううん。目が合う、と表現するのは間違いかもしれない。
目があるべき場所は、形だけでなにもないんだから。
思わず悲鳴を上げそうになり、ぐっと堪える。
顔を横に背けると、恐怖に染まる二十の瞳がなにかを見ていた。
マネキンのような外見をした『ヤツ』か、それとも……
わたしの名前は木村冴女。
平凡な普通の女子高生・・・だった。
今は、そう言えない状況にある。
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