地底遊戯

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 もやっとしたけど、蓮君の、 「すごい! 田辺のおじいちゃん、これ、すごいね!」 という嬉しそうな声が聞こえて、ぐっと堪えた。  ずっと田辺さんに隠れるようにしていた蓮君。  初対面の大人達の中で、心細かったのだろう。  子犬みたいに怯えていたのに、年相応な笑顔で笑っているのを初めて見た。  そんな蓮君に、田辺さんは柔らかい笑みを返す。 「すごいねぇ。楽しみだねぇ」 って……テーマパークに来たおじいちゃんと孫みたいに。  気持ちを切り替え、再び白く光る四角に目を戻すと、そこにはいつの間にか本当に双六のコースが出来上がっていた。 「……すごい」  誰にいうわけでもなく、思わず漏れてしまった言葉に、美知佳さんと志摩さんが頷く。 「本当にリアルなダイスゲームなんですね」    そういった志摩さんは、大してずり落ちてもいないのに、何度も眼鏡の位置を直していた。  レミたんは志摩さんの右手の袖をくいくいっと引き、自分に注意を向ける。 「先生! もっと近くで見ようよぉ~~」 「え? あ……」  志摩さんはレミたんに引っ張られるまま、コースの方へ連れていかれた。  レミたんの行動力に呆気にとられていると、 「噂に聞いていた通り……」 という美知佳さんの小さな呟きが、耳に入る。
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