地底遊戯

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 近くに松明があったせいか、振り向いた田吾作さんの瞳が赤く輝いて見える。  それがあまりにも綺麗で、迫力があって気圧されてしまいそう。 「なに?」  不自然に目線を逸らしたわたしの顔を、田吾作さんが覗き込んだ。 「え? あ、いや……田吾作さんはどうしてここにいたのかなって? ちょっと思ったっていうか」    そんなこと聞くつもりはなかった。  他のみんなと同じような状況だろうなって思ってたし、別に気にしてたわけじゃなかったし。  でも田吾作さんから返ってきたのは、予想外の言葉だった。 「捜してる人がいるの」 「え?」   捜してる人? 「どういう……こと?」 「どういうことって? 人を捜してる事が?」 「いや、そうじゃなくて……じゃあ、田吾作さんは自分の意志でこの洞窟にいたの?」    田吾作さんは首を傾げる。  わたしがなにを言っているのかわからないように。 「だから、田吾作さんはここからどうやって出たらいいか知ってるの? 自分で来たんでしょ?」    口調が強くなるのが自分でもわかった。  田吾作さんとの会話がとてももどかしい。  田吾作さんは少し沈黙した後、はっとした顔で手を叩いた。 「冴女を連れてきたのはあたしじゃないわよ?」 「いや、そうじゃなくって……」    疲れる。  田吾作さんとの会話がとっても疲れる。  田吾作さんはなにか考えていたようだが、はっとした顔になると首を横に振った。
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