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頭はぐわんぐわん。
髪の毛はぐっしゃぐしゃ。
壁にある松明のおかげでかろうじて機能している視覚から得た情報によると、わたしは今洞窟の中にいるらしい。
ぼーっとしているせいか、いまいち現実感がないけれど。
修学旅行で行った鍾乳洞と同じ匂いがする。
カビっぽいような、湿った土の匂い。
ぞくっとするような寒気もするし、松明があるといっても見えているのは一部分だけ。
意味不明。
なんでこんなところに?
ごつごつとした岩肌は見るからに痛そうなのに、足元はとても暖かくふんわりとしていた。
一体なんの上に座っているのか確認するために目を向けたわたしは、慌てて飛び退く。
「な、な、な……」
「あ、起きたのね」
がりっと尖った岩が脹脛の皮膚を掻いた。
松明の灯りに照らされて、赤く輝く瞳がわたしを見つめる。
「よく寝ていたからそのままにしてたんだけど、元気そうで安心したわ。もう動けるかしら? そろそろ移動したいと思っていたの」
キーは高め。でも口調とは真逆の性別の声に、わたしはなんの言葉も返せなかった。
白い肌に赤い髪。そして炎のような瞳。
西洋のビスクドールを思わせる整った顔は、こんな状況でなかったらきっと見惚れていたに違いない。
でも現状を理解できないわたしには、その美しさも恐怖のスパイスのひとつだった。
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