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「大丈夫?」
「だ、大丈夫、だと思う」
そう返し、立ち上がろうと試みる。
男性はすくっと立ち上がると、わたしの手を軽く引き、手助けをしてくれた。
「ありが……え?」
お礼を口にしながら固まる。
視界に飛び込んできた周囲の状況が、あまりにも異常だったから。
自分が洞窟みたいなところにいるんだろうなとは思っていた。
でも、松明に照らされたごつごつとしていてぬらぬらとしている岩肌や、どこからか聞こえるカサカサっていう虫が動く音以外、完全な闇に閉ざされた世界は、想像以上に凄まじいものがあった。
冷たい空気が肌を撫でる。
松明の明かりに集まった虫が、ジジジッという音をたて、焼かれて落ちた。
「ここ……どこ?」
茫然としたまま立ち尽くすわたしの見ていた男性は、きょとんとした顔で、
「暗いわよね」
と答える。
いや、そんなことを聞いてない。
って突っ込みたい気持ちも、男性の言葉遣いに驚いて失せた。
「あ、あの、オネエ様の方ですか?」
失礼なわたしの発言に、男性は首を横に振る。
「オネエって名前じゃないわ。山田田吾作っていうの。よろしくね」
冗談でしょ。
いつの時代の人なんだって。
わからない。
なにがなんだか全然わかんない。
体や頭が痛いのもなんで?。
いや、そもそもなんでこんな洞窟の中にいるわけ?
珍しいものでも見るような表情で、わたしを見ている男性。
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