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ぶしつけな態度にイラついて、
「山田さん……あなたがわたしを誘拐したの?」
と、尋ねると、男性は首を横に振った。
「田吾作、でいいわよ。誘拐ってどうして?」
「じゃあ田吾作さん。どうしてって……どうして?」
「だってここに寝てるあなたを、見つけただけだもの。誘拐なんてできるわけないじゃない」
男性、田吾作さんは深く息を吐き出し、肩を竦める。
全然わからない、というように。
「だまそうったってそうは……」
混乱するわたしの頭の中は、女子高生誘拐事件!? とか、人身売買とか物騒な言葉でいっぱいだったんだけど、田吾作さんがわたしの背後を指さしてる事に気付いて言葉を切った。
「……なに?」
「あれがなにか知ってるんじゃない?」
あれ?
なんのことかわからないまま背後を振り返ると、そこには真っ白なマネキンが暗闇の中、ぼやっと浮かんで見えていた。
「マネキン? なんでこんなとこに……」
意識したことがなかったけど、こんな場所でみるマネキンって、ものすごく怖い。
思わず田吾作さんの腕を掴むと、
「聞いてみる?」
って、なんとも呑気な言葉が返ってきた。
なに言ってるの、って言おうとした口を閉じる。
ゴトッ、ゴトッっという、なにかが床をたたく音が聞こえた。
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