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オレのアシスタントは優秀だ。 仕事は早いし、気配りもできる。そして何より、とてもかわいい。 クリっとした黒くて大きな目は、まるで子犬のようにいつも潤んでいて、口角の上がったその口元と茶色い髪が、まるでポメラニアンのようだ。 それに、彼が纏っている空気はいつもほんわかしていて和む。 彼を外回りに連れていくと、ほぼ契約は成立する。 何度足を運んでも首を縦に振らなかった担当者も、その子犬のような容姿とふわふわとした空気感に取り込まれ、いつの間にか契約書にサインしているのだ。 こんなにかわいくて優秀なのに、本人は全くその自覚がない。自分は平均的な普通の人間だと思っているのだ。 だから、彼のお陰で契約が取れたと言っても、笑って流されてしまう。 本当、全くの無自覚。 可愛らしい容姿は実は女性にはモテない。けれど、恋愛対象としてでは無く、女友達として社内でもよく一緒にランチやお茶をしている。 彼はお弁当持参で、お茶も自分専用の茶葉を給湯室に置いている。だから、いつもお昼はお弁当組の女の子たちとテーブルを囲んで、彼女たちの分までお茶を入れてあげながら一緒に過ごしている。 人見知りをするのか、外回りでは密かに緊張しているようだが、彼女たちとは普通に話しているので、本人も多少は心を許してるみたいだ。 その反面、男子社員の前では外回りと同じ反応なので、なかなか打ち解けてもらえない。 かく言うオレの前でも、緊張されてしまう。 週に一度は、外回りで一緒に過ごしてるのにね・・・。 彼は普段素顔を隠している。猫を被る、と言うやつだ。 人見知りの割にコミュニケーション力が決して低くないのは、彼が猫を被って、ある種のいい人を演じているからだ。それはとても巧妙で、周りはほとんど気づいていない。それくらいあまりに自然なのだ。 話しかければ答えてくれるし、頼み事も嫌な顔せず受けてくれる。 いつもふんわりとした笑顔の彼と、一見親しくなれたような気がするけれど、実はそうじゃない。柔らかいその笑顔で、やんわりと相手を拒絶し、決して自分の内側へは入らせてくれないのだ。だから、この会社の中でも、彼を狙っている男子社員は結構いて、何かにつけて話しかけたり、飲みに誘ったり、あれやこれやと彼の気を引こうとしているが、それはことごとく失敗していた。 あんなに露骨に誘われても全然自分の魅力に気づかないんだから、よっぽどだよね。 おにーさん、心配になっちゃうよ。 かなりガードが硬いから、そうそう危険な目に合わないとは思うけど、世の中何が起こるか分からないから・・・。
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