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恋人
青島がシャワーを浴びて出てくると、未来は寝室のドレッサーの前で、やっと髪を下ろし終えたところだった。
カールの残る髪はセットされていたせいで、あちらこちらに向いて収拾がつかない。
バスルームに入ると外から見える心配などなさそうな窓は、それでもロールカーテンが下されていた。
バスタブに入らないのは勿体ないな、と未来は思いながら頭からシャワーを浴びると、その温かさにほっとした。
シャワーを終えた後、バスローブを羽織った自分の姿がやけに生々しく思えて、未来は結局、寝間着のロングシャツを着ることにした。
青島はバスローブを着ていたが、その姿は自然で違和感は感じられず、着慣れているのかなと、くだらないことを考えて落ち込みそうになってしまったので、余計な詮索は止めることにした。
バスルームから出て、二つあるベットのどこにも青島の姿は見当たらず、未来は少し拍子抜けしながら、リビングを覗いた。
すると青島はソファーに座って、窓に顔を向けていた。
「お待たせしました。」
未来が声を掛けながらソファーに近づくと、青島は少し驚いたように口を開いた。
「お待たせしましたって、お前…。」
「あっ、いや、そういう意味では。」
気まずいまま、未来は隣のソファーにぺたんと座った。
「ほら水だ。」
青島が、グラスにミネラルウォーターを注ぐ。
「また飲んでるんですか?」
青島のグラスの中は、琥珀色だった。
「待たされて、柄にもなく緊張してるからな。」
またからかって、と青島の顔を見ると、眩しそうにこちらを見つめる目と合ってしまい、未来は思わず俯いてしまった。
「中西。」
はい、と返事をして未来は顔を上げた。
「おいで。」
手を差し出され甘い声で呼ばれては、拒否など出来はずもない。
一気に緊張が込み上げてきて、躊躇いながら出された手を取り、立ち上がった。
そうして青島は未来を引き寄せると、指輪が光る手にキスをしてから言った。
「心の準備がまだと言うなら、これ以上はしない。」
青島の言葉に、未来は戸惑う。
と同時に課せられた思いに、未来の手は震えた。
「社長、酷いです。ここまで来て、私に答えを委ねるなんて。」
それを聞いた青島は、あっという間に未来を膝の上に座らせて、開いた唇で未来の口に押し入った。
未来の体を支えていた手は、シャツのボタンに掛かりひとつふたつと外されていく。
後ろには夜景が広がり、そのおぼろげに明るいリビングで、未来は抵抗して見せた。
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