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師走の週末ともあって、街は賑やかだった。
アーケード街はごった返していて、歩くのもままならない。
未来と青島は自然と手をつないで、歩いていた。
そしてうどんもそばもやっている店に入って、未来は鍋焼きうどん、青島は天ぷらそばを注文した。
「誰かに見られたら、どう思われますかね?」
未来は、熱々の鍋焼きうどんと格闘しながら聞いた。
「お前ならどうだ?うちの女性社員と俺が休みの日に一緒にいるのを見掛けたら、怪しいと思うか?」
「会社の人なら怪しまないかな。だってありえないって思い込んでますから。」
「そうなのか?」
「ええ。きちんと線を引いている気はします。あとは相手にされないだろうなとも。」
「そうか。もちろん社員をそういう目で見たことはないが、冷たく感じていたのか?」
「いえ。こうなったら、とことん線を引いてくれた方が、私は安心します。」
未来があまりにも普通に言うので、青島は箸を止めて、その顔をまじまじと眺めた。
「お前でも、そんなこと言ってくれるんだな。」
どことなく青島は嬉しそうだ。
「だって、どう考えてもモテると思いますし、それに女性を振り払うことが出来ずに、されるがままっていうのは良く分かりましたから。」
淡々と言う未来に、青島は口に入れたそばを、思わず吹き出しそうになった。
「変な言い方するな。ちゃんと断った。」
「わかってます。ごめんなさい。つまらないこと言いました。」
「食べたら、部屋に戻る。」
「怒ったんですか?」
「違う。お前がまだ分かっていないようだから、存分に言って聞かせる。」
未来は途端に怖気付く。
「大丈夫です。分かってます。ね?」
それでは逆効果だ、と青島は思った。
こちらの機嫌を伺うような表情が可愛くて、やはり今すぐ部屋に戻りたくなったのだから。
それでも未来から、この辺りは久しぶりだからと
「デートしましょう?」
などと言われては無下には出来ない。
それに冬のアーケード街を、寒さにかこつけて腕を組んで歩くのは悪くなかった。
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