『思い出屋』へようこそ。

2/7
8人が本棚に入れています
本棚に追加
/22ページ
「ふー……」  商店街へ足を進めながら、思音は安堵ともため息ともつかない息をもらす。  家から遠くて時間をつぶすのに丁度いい、そこで思い当たったのが商店街だった。  今回はかなりの大げんかだ。大分時間が経たないとお母さんの怒りが消えることはないだろう。  そこで家から遠いところに行きたいと思い、夜十時くらいには帰るつもりで、財布だけを持って家を出た。  夕焼けの色に覆われた空を何とはなしに見上げる。  さっき学校から帰ったばかりと思ったら、もう夕暮れが始まっているなんて……そういえば宿題がまだ終わってなかったな。  現実的なことに気づいて一瞬立ち止まってから、まあ明日は土曜日だからと気を取り直す。 「ふー……」  二回目のため息をついてから、山の向こうに急ぐ太陽に影響されるように、思音も駆け足になった。
/22ページ

最初のコメントを投稿しよう!